オランダにおける「自転車の死傷者を減らすための挑戦」

交通と自転車]2016年4月4日(月)

先週金曜日は、私が所属するNPO法人自転車活用推進研究会(通称:自活研)の講演会に参加しました。

 

演題は「自転車の死傷者を減らすための挑戦」、講演者はオランダ交通安全研究所のディベラ・トゥイスク氏です。

 

自転車先進国の一つであるオランダでは、第二次世界大戦後の経済発展に伴うクルマ社会化によって交通事故死者数が急増したことを受け、まず市民の間に「クルマから自転車へ」という草の根運動が起こり、それが政治家を動かした結果、現在では、交通政策の中に必ず自転車が含まれているとのことです。

 

それを如実に表しているのが、掲載画像にあるフローニンゲンの街並みです。
1960年には既にクルマ中心の街並みであり、1970年には道路と駐車場の整備がさらに進行したものの、現在(2014年)は歩行者と自転車中心の街並みに変貌しています。そして、それは250年前にあったかつてのフローニンゲンの街並みです。

 

このようにまずは街中からクルマを少なくしたオランダでは、1990年代から、「持続可能な安全(sustainable safty)」という原則をもとに、交通事故が起きないような道路構造(歩行者や自転車をスピードのあるクルマから分離する)、またはヒューマンエラーにより交通事故が発生したとしても重大な負傷とならないような道路構造(歩行者や自転車と交錯する場所ではクルマのスピードが抑えられる)の整備を進め、交通事故数を大幅に減少させることに成功しました。

 

そして現在は、「各施策の効果」を検証する段階に移行しています。

 

例えばハード面では、クルマの50km/h制限区域をゾーン30にすると「事故数15%減」、自転車道を整備すると「事故数24%減」、交差点にラウンドアバウトを整備すると「事故数30%減」、クルマに対自転車エアバッグを装着すると「重大事故数40%減」、自転車の前面に反射材を装着すると「事故数4%減」などです。(以上はすべて単独での前後比較)

 

ソフト面では、安全教育の効果検証です。

 

安全教育は必要なものであるものの、その効果を評価することなくやりっぱなしになっていることが課題ということです。
自身の欲求にブレーキを掛ける役目を果たす前頭葉が発達していない小さな子供たちに自制心を持たせるために、例えば交通事故映像などを見せて恐怖を与えたとしても、子供たちの心理に防御作用が働き、自分とは無関係な出来事と捉えてしまって、ほとんど効果は無いとのことです。

 

他にもオランダでは、停車したトラック付近の横断歩道の渡り方など、ケーススタディによって子供達自身に考えさせる安全教育も行っていますが、いずれにせよ、それらの効果を検証し改善していくことが必要であるとのことです

 

日本においては、科学的な検証に基づく「エビデンスベースト」の政策判断が、教育政策などにも波及し始めていますが、オランダではこの考え方を交通安全にも取り入れているということで、これは日本においても大いに参考にすべきと感じました。
限られた税金をより効果的な施策に再配分していけば、交通安全社会の実現がさらに進みます。

 

なお、現在研究を進めている交通安全の課題は、「歩行者や自転車と自動運転カーとの安全な共存」とのことです。

 

 

 

講演の最後には、「私達(オランダ人)は自転車に乗ることが好き」というメッセージがありました(^^)

 

2016-04-01 20.00.58

 

 

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