「第11回 マニフェスト大賞」に応募しました

行財政改革, その他]2016年8月31日(水)

本日、「第11回 マニフェスト大賞」に応募しました。

 

マニフェスト大賞」は、地方議員や首長などの取り組みを表彰することにより、地方政治の善政競争を促す企画で、毎年全国から2,000件以上の応募があります。

 

私は一昨年(第9回)と昨年(第10回)に応募し、第9回では《自転車は左プレート》で「優秀政策提言賞」「優秀プレゼン賞」を個人として受賞、第10回では《図書館改革に向けた提言書》で「優秀成果賞」「優秀プレゼン賞」を委員会として受賞しました。

 

今回は、本年3月議会の一般質問で提案した《統計調査の回収率向上》のテーマで応募しました。
統計調査の回収率向上は、選挙の投票率向上と同様に、地方自治体の行政運営にとって大切なものなのですが、いかんせん地味なテーマなので、受賞できるかどうかは未知です。

 

というわけで今回は、エントリー用原稿(長いです)をあらかじめ以下に掲載しておきます。
1か月後に、こちらで何の報告も無ければ、落選したと思ってください……

 

明日の本会議では、午前中に2件の質疑を行います。

 

第11回 マニフェスト大賞 エントリー用原稿

取り組み概要

 

 他の自治体と同様、戸田市においても、住民を対象とする意識調査やアンケート等の統計調査が数多く実施され、それらの結果が各種の事業計画等に反映されている。しかし、統計調査の回収率は年々減少傾向にあり、なかには回収率が20%台のものも存在する。

 

 主に財政上の都合により、自治体が実施する統計調査のほとんどは、母集団から無作為にサンプルを抽出して行う標本調査であるが、標本調査により得られる結果は、あくまで抽出されたサンプルによる見かけの結果であり、それが全数調査により得られる真の結果と完全に一致するとは限らない。

 

 この無作為抽出という行為によって生じる誤差は、専門的に「標本誤差」と言い、統計学的に計算することが可能である。例えば、参考資料《標本調査A》において「賛同率50%」という見かけの結果が得られているが、ここで標本誤差を計算すると、真の賛同率は「47.8%~52.2%の範囲に95%の確率で収まる」ということが分かる。

 

 しかし、これは、《標本調査A》の回収率が100%であるが故に成り立つ話である。実際には、統計調査の回収率が100%となることはほとんど無い。つまり、統計調査に回答する住民と回答しない住民とが存在し、そこに「回答者の属性の偏り」が生じてしまう恐れがある。これは、統計学的には計算することのできない「非標本誤差」の代表的なものである。

 

 参考資料《標本調査B》は、回収率20%、見かけの賛同率「50%」の統計調査だが、ここで、調査に回答しないという判断をした残りの80%には、ある属性の偏りが生じている可能性がある。極端な仮定となるが、その属性の意思が仮に「不賛同」であったとすると、サンプル全体での見かけの賛同率は「10%」となり、逆に、回答しなかった80%に「賛同」の属性があるとすれば、サンプル全体での見かけの賛同率は「90%」となってしまう。

 

 つまり、ある統計調査が行われ、その回収率が低かった場合、調査で得られた結果の信頼性に関して、「回答者の属性の偏り」という非標本誤差に言及することなしに、(回収率100%という無意識の前提に立ち)標本誤差のみを計算したところで、ほとんど意味を成さない。

 

 以上の通り、統計調査の回収率が低いほど、そこで得られる結果の信頼性は失われていく。これでは、税金を使って統計調査を実施すること自体の意義が問われかねず、また、その調査結果を反映した事業は、一部の偏った属性の意向に沿ったものとなりかねない。

 

 全国の多くの自治体が見落としているこの問題に関し、私は、戸田市議会平成28年3月定例会の一般質問において指摘を行い、あわせて、調査回収率の向上や、回収率向上に向けた意識の改善を求めた。

 

 答弁は非常に前向きなものであり、現在本市において、①調査回収率の向上策として、ホームページやSNSを利用した「ウェブ調査」等の導入検討、②回収率向上に向けた意識改善策として、行政内部での「事務事業評価」や第三者委員による「外部評価」(いずれもネット公開されている)における、統計調査業務に関する取り組み・回収状況・反省などの新規項目立てとそれに基づくPDCAサイクルの確立の検討が進められている。

 

特に力を入れた点、取り組みのポイント

 

 専門家によれば、統計調査の回収率が60%を下回ると、回答者の属性の偏りが無視できないものとなり、調査結果の信頼性は大きく失われるとのことである。

 

 調査回収率の向上策に関しては、大学等でも研究が進められているが、現在のところ決定的な解決策はなく、例えば、調査用紙にイラストを散りばめたり、または、回答後ではなく調査依頼の段階で封筒に粗品を入れたり、といった小さな工夫やノウハウが積み重ねられているのが現状である。

 

 調査回収率の減少は、本市に限らず、全国的かつ世界的な傾向である。平成22年には厚労省から、「回収率が低いと、非標本誤差が大きくなり、政策判断あるいは企業の経営判断や国民の経済情勢の把握を妨げ、適切な政策運営などの障害のみならず、厚生労働統計の正確性と有用性の観点から、できる限り回収率の向上に努める必要がある」との文書が各部局向けに出されており、平成27年12月には、イギリス政府が「最近のペースで回答者の減少が続けば、公式統計の正確性が低下する恐れがある」との警告を出している。同じくイギリスの専門家は、「働いている人よりも働いていない人のほうが調査に応じる傾向がある。また、教育水準の低い人々の意思が除外されやすい」とも述べている。

 

 このように、国レベルでは統計調査の回収率低下に対する危機感が持たれているものの、自治体にまではその意識が浸透していないなか、今回、戸田市議会において提言を行うにあたっては、戸田市のみならず全国の自治体にも、回収率低下に対する危機意識を持ち統計調査業務の改善を図っていただきたい、という思いがあった。

 

 選挙の投票率向上については、国や自治体を挙げて取り組まれており、それに対し多くの住民の理解が得られている。それは、「一部の偏った住民でなく、できる限り多くの住民の意思を広く吸い上げることが大切」という認識が共有されているからではないかと思う。しかし、統計調査の回収率に関しては、自治体だけでなく議員や住民の関心も低い。

 

 選挙における「投票」とは、間接民主制における住民の意思伝達手段であり、住民から選ばれた議員や首長は、住民の代わりとなって住民の意思を行政に反映させる。一方で、統計調査における「回答」は、住民の意思がそのまま行政の事業に反映されるもので、いわば直接民主制での住民の意思伝達手段とも言える。今後、地方分権が進められていくにあたり、すべての自治体にとって、統計調査における回収率は、健全な民主主義に基づく自治体運営を行う上で、選挙における投票率と同様に大切なものであると考える。

 

参考URL


1:http://www.mhlw.go.jp/seisaku/jigyo_siwake/shiryou/dl/003g.pdf


2:http://jp.wsj.com/articles/SB11984305046321184388704581395331971264342

 

 

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