〈小さい交通〉で自由に移動できるまちづくり

交通と自転車]2016年8月15日(月)

ご報告が遅くなりましたが、先月15日に秋葉原で開かれた「ネクスト・モビリティ・コミュニティ 第2回研究会」に参加しました。

 

第2回となる今回は、「〈小さい交通〉で都市を変えよう」というテーマで、講演と発表、パネルディスカッションが行われました。

 

これからの“交通とまちづくり”を考えるうえで、非常に示唆に富む研究会となりました。

 

私はこれまで、ひとの交通手段として、

 

「クルマ」
「公共交通」
「自転車」
「徒歩(クルマ椅子)」

 

を主に想定し、これらのうちの「公共交通」「自転車」「徒歩」を中心としたまちづくり(=クルマに依存しないまちづくり)を推進してきました。

 

しかし今後は、徒歩と公共交通との間を埋めるものとして、自転車だけでなく、自転車を含む〈小さい交通〉を、まちづくりに取り入れていく必要があるとのことです。

 

ここでいう〈小さい交通〉とは、自転車や電動クルマ椅子、小型バイクや小型自動車などの「小さい乗り物」と、人力車や自転車タクシーなどの「小さい乗り物による公共交通」のことで、以上をまとめると次のようになります。

 

「クルマ」
「公共交通」
〈小さい交通〉=小さい乗り物とそれによる公共交通
「徒歩(クルマ椅子)」

 

 

〈小さい交通〉を利用すれば、徒歩では遠いちょっとした距離の移動がしやすくなり、また、乗り物がゆっくりと走るので街の移動を楽しむことができます。
それにより、商店街や露天商のような小さな商売も活性化します。
また、〈小さい交通〉は小回りが利くことから、外出が困難な方や買い物難民の方に向けた配送サービスが充実します。
ただし、それらを可能とするには、〈小さい交通〉の利用しやすい道路環境や駐車スペースを整備したり、従来の公共交通と〈小さい交通〉との乗り継ぎをスムーズにしたり、といったまちづくりを行っていく必要があります。

 

高度経済成長期以降のクルマの普及により、まちはどんどん大きく拡がっていきました。
これからは、障害者や高齢者も含めて、小さいまちのなかを徒歩や〈小さい交通〉で自由に移動でき、小さいまちと小さいまちとの間は公共交通で移動できる、といったまちになることが望まれます。

 

私は、それが“すべての人にやさしいまち”だと思います。

 

なお、今回の研究会では、〈小さい交通〉の開発者による発表も行われ、その発表者のなかに、電動カート「ぱるぱる」を開発・販売されている戸田市在住のご婦人・内山久美子さんがいらっしゃいました。
内山さんについては、後日あらためて、こちらでご報告しようと思います。

 

『〈小さい交通〉が都市を変える マルチ・モビリティ・シティをめざして』(NTT出版)

 

電動カート「ぱるぱる」

 

高齢者や障害者にとっての自転車=「ネクストモビリティ」 2016/6/21(真木大輔公式ブログ)

 

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戸田市での課題解決が他自治体の住民福祉向上に役立っている

交通と自転車, 安全と防災, 議会と選挙, その他]2016年8月12日(金)

ちょっとティーブレイクです。

 

議事ロックス」という、知る人ぞ知るウェブサイトがあります。
全国の地方議会の(ネット公開されている)議事録から、ワードを一括検索できる無料サイトで、おそらく2か月程前にオープンしました。

 

「議事ロックス」の検索機能を試すついでに、私が過去に戸田市議会で提案した取り組みが、その後全国にどのくらい波及しているかを調査してみました。いわば政策エゴサーチです。

 

【調査①】前かごへの《自転車は左》プレート掲示

 

私が平成26年6月に提案し、戸田市が全国で初めて実現。その後、「第9回マニフェスト大賞」を受賞した取り組みです。

 

議事ロックスで調べた範囲では、その後、全国7市の議会で提案されたようです。

《自転車は左》プレート掲示が提案された議会

 

 

【調査②】土のうステーション

 

私が平成25年12月議会で提案し、戸田市が埼玉県内で初めて設置したものです。(戸田市内の設置個所は当初の7カ所から現在は10カ所に増加。)

 

議事ロックスで調べた範囲では、その後、県内10市町の議会で提案されたようです。

土のうステーションが提案された議会

 

私の知る範囲では、「組体操の見直し」や「自転車走行空間整備」なども他市に波及していますし、その他、直近の1年間に行った提言は今後拡がっていくと思います。

 

これらはすべて「戸田市の課題」を解決しようとするなかで生まれた提言ですが、それが結果として他自治体の住民福祉の向上に役立っているということは、とても嬉しく誇らしいことです。

 

 

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「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」一部改訂と戸田市の状況

交通と自転車]2016年8月7日(日)

このところ、他自治体の議員や市民の方から、「わが市でも自転車走行空間の整備を進めたい」というご相談を頂きます。
先日は、日経新聞(7/29朝刊)で報道された「国の自転車ガイドライン改訂」と戸田市の状況に関してのお問い合わせがありましたので、やや専門的な内容になりますが、こちらでみなさんにもご報告しておきます。

 

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平成24年11月に国交省と警察庁により策定された「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」は、主に自転車走行空間の整備について定めたもので、本年7月19日に一部改訂がなされました。

 

以下では、今回の一部改訂の主なポイントを(新聞報道では触れられていないものも含めて)5つ挙げ、それぞれの概要と併せて戸田市の状況についてもご説明します。

 

ただ、一言でいえば、「改定される前から戸田市は大丈夫」です。

 

【ポイント①】段階的なネットワーク計画策定

 

自転車走行空間を単発的に整備していくのではなく、これからは、重点的なエリア毎に計画を策定&整備し、最終的にそれらのエリアを繋いでいくことで、広域の自転車ネットワークを整備しよう、というものです。

 

戸田市では、ガイドライン改訂前から、ほぼ同様の整備を進めています。具体的には、自転車通行量の多い「イオン・南陵高校付近」「市役所南通り」を重点エリアとし、優先的な整備を進めています。(ただし、戸田第二小学校前の自転車走行空間だけは単発的です。)

 

【ポイント②】暫定形態の積極的な活用

 

クルマの通行量が多い道路における自転車走行空間としては、「自転車道(=車道とも歩道とも縁石などで仕切られた自転車走行空間)」や「自転車レーン」が完成形態とされますが、現状においてそれらの整備が困難な道路でも、「車道上の矢羽根」などの暫定形態の自転車走行空間を積極的に整備しよう、というものです。

 

戸田市では、ガイドライン改訂以前より暫定形態の活用が進められています。イオン前の道路や南陵高校前の道路における「車道上の矢羽根」がその例です。(※下部リンク記事参照)

 

【ポイント③】路面標示の統一


これまでは、自転車レーン上の矢印や、交差点上の矢羽根、自転車ナビマークなどの形状や設置間隔が自治体によってバラバラでしたが、これからは、全国統一の仕様とし、より分かりやすくかつ安全なものしよう、というものです

 

戸田市でも、今後は全国統一の仕様が順次導入されていくと思われますが、既に、昨年3月議会の一般質問で私が提言し本年3月に戸田公園駅前に試験的に導入された自転車ナビマークには、ガイドライン改訂に先立ち全国統一の仕様が採用されています。(※下部リンク記事参照
なお、側溝蓋(グレーチング)については、私が以前に担当課に要望して以降、自転車のタイヤがはまらないような目の細かいものが導入され、これも今回のガイドラインが提示する仕様を満たしています。(※下部リンク記事参照)

 

【ポイント④】色分け自歩道を除外

 

これまでは、自転車走行空間の暫定形態として「色分け自歩道(=広い歩道を歩行者部分と自転車部分に色分けしたもの)」も可とされてきましたが、今回の改訂では、その整備形態が暫定形態から除外されました。

 

戸田市でこのような整備が行われないよう、私は以前から議会で「歩道ではなく車道に整備すべき」と牽制し続け、担当課からの理解も頂いていましたが、ようやく今回のガイドライン改訂により、「色分け自歩道」が望ましくない整備形態と認められました。

 

ところで、以前にこちらで指摘した蕨市の「色分け自歩道」(※下部リンク記事参照)は、今後も整備延長が伸びていく予定とのことでしたが、一体これからどうするのでしょうか?

 

【ポイント⑤】自転車道の一方通行化

 

これまでは、「自転車道(=車道とも歩道とも縁石などで仕切られた自転車走行空間)」の双方向通行が認められていました。

双方向通行の自転車道は、一方通行の自転車道と比べて、自転車にとっての利便性は高いものの、交差点上でのクルマとの出会い頭事故が招かれやすい、自転車同士の対面衝突が起こりやすいなどの課題があります。
今回のガイドライン改訂では、安全面が考慮された結果、完成形態としては「一方通行の自転車道」が基本となりました。

 

戸田市内にはいまだ「自転車道」はありませんが、今後は国道298号(外環)などで整備される可能性があります
今回のガイドライン改訂は、その整備にも影響を与えます

 

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なお、日経新聞の報道は7月29日ですが、私はすでにガイドライン改訂の翌日(20日)には戸田市の担当課と情報共有を行っており、さらに言えば、今回のガイドライン改訂の元となった有識者による提言書についても以前から情報共有しています。

 

自転車レーン表示統一 車道走行促し、事故減少狙う 国交省・警察庁(日本経済新聞)※無料会員登録が必要

 

安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインの一部改定について(国土交通省)

 

本来あるべき道路シェアの形 ~戸田市の自転車走行空間整備~ 2016/2/22(真木大輔公式ブログ)

 

「生活道路への自転車ナビマーク設置」が実現しました 2016/3/28(真木大輔公式ブログ)

 

自転車レーンのグレーチング(=側溝蓋)を目の細かいものに交換 2014/11/10(真木大輔公式ブログ)

 

蕨市のあまりにも酷い「色分け自歩道」 2016/6/8(真木大輔公式ブログ)

 

 

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「ガードレール設置」はクルマ中心の思想 ~第10次戸田市交通安全計画案~

交通と自転車, 安全と防災]2016年7月19日(火)

戸田市における今後5年間(H28年度~H32年度)の交通安全施策の大綱を定める「第10次 戸田市交通安全計画(案)」のパブリックコメントが始まっています。

 

前回の第9次計画との大きな変更点は、ハード面(インフラ整備)とソフト面(交通安全啓発)の双方において、「自転車」に関する施策が拡充され、新たに項目立てされたことです。

 

このこと自体は、自転車と歩行者の安全確保のために良いことなのですが、実はこの変更は、戸田市独自のものではなく、戸田市の計画が準拠している埼玉県の「第10次 埼玉県交通安全計画」、さらにもとを正せば、埼玉県の計画が準拠している国の「第10次 交通安全基本計画」においてなされたものです。

 

むしろより注目すべきは、今回の戸田市の第10次計画のなかの歩行者安全確保策から、「ガードレール設置」と「カーブミラー設置」が外された点です。
これは、国や埼玉県とは異なる、戸田市独自のものです。

 

歩行者をクルマ等との衝突から守る施策はいくつかあります。
主なものとしては、①広い歩行者空間の整備(それにより歩行者とクルマとの距離を空ける) ②クルマの速度抑制(=車道を狭くする、車道を蛇行させる、車道に凸凹を設置する、車止めを設置する等)です。
これらの施策は、国、埼玉県、戸田市のいずれの計画にも含まれています。

 

一方で、「ガードレール(車両用防護柵)の設置」も、歩行者の安全を確保する有効な施策であると思われがちですが、これは上記①②の施策とはまったく逆の思想に基づいています。

 

例として、歩道ではなく路側帯(=白線で仕切られた歩行者空間)がある道路を考えます。【画像参照】
その路側帯が、歩行者の空間としては狭く、クルマとの接触の危険性がある場合、歩行者の安全確保策としては、上記①②の「路側帯を広くする(車道を狭くする)」「クルマの速度抑制の注意喚起」などの施策がとられます。(実際に戸田市の道路では、そのような道路改良が進められています。)

 

しかし、そのような施策の代わりに、「ガードレール設置」という方法がとられると、どうでしょうか。
まず、ガードレールの分だけ歩行者空間が狭くなり、またガードレールで道路が区切られてしまうことで、状況に応じた道路空間の共有ができず、「歩行者にとって歩きにくい空間」となっていまいます。ベビーカーやシルバーカー、車イスなど、一定の幅がある方にとっては尚更です。
次に、ガードレールにより、歩行者空間が車道から分離されることで、歩行者にとってもクルマにとっても一見“安心”となり、それが結果的には「クルマの速度促進」を招きます。安全は安心を生みますが、安心は安全を生みません。
(なお、カーブミラーの設置も、クルマ運転者の安心を生むという点で同様です。以下のリンク記事をご参照ください。)

 

つまり、同じ歩行者安全確保策でも、上記①②は“歩行者中心”の思想に基づくものであるのに対し、ガードレール設置は“クルマ中心”の思想に基づいています。

 

あまり知られていない事実ですが、ガードレールが道路にここまで設置されているのは日本特有です。
そして、交通事故による死者数において、クルマ側よりも歩行者側の方が多い国は、先進国のなかで日本だけです。

 

【参考】2012年の交通事故死者数
・ドイツ クルマ側1,791人 歩行者側520人
・イギリス クルマ側 831人 歩行者側 429人
・日本 クルマ側 1,088人 歩行者側 1,904人

 

日本では、地域住民やお子さんの通園通学を心配される保護者等から、「ガードレールの設置を」と求める声が上がることが多いのですが、本当に歩行者の交通事故を減らすのであれば、「歩道を広く、車道を狭く」などと求めるべきです。(その分、みなさんがクルマ側になった場合の利便性は減ります。)

 

日本より先にクルマ社会となった欧米の国々は、いまではクルマ社会から脱却し、歩行者中心のまちづくりを進めています。
日本がクルマ社会となったのは、ほんの50年ほど前です。その少し前の江戸時代では、馬車の使用が禁止されており、江戸は徒歩中心のまちでした。

 

今回の戸田市の計画変更を私は大いに評価し、今後戸田市で歩行者中心のまちづくりがさらに進められていくことを期待します。

 

以下は、戸田市交通安全計画からの抜粋です。

 

「第9次 戸田市交通安全計画」
第3章 3(1)歩行者の安全確保
歩行者の死傷事故発生割合が大きい生活道路においては、道路構造や交通流量の状況を勘案したガードレール、カーブミラー、標識など総合的な交通事故抑止対策を推進します。

 

「第10次 戸田市交通安全計画(案)」
第3章 1(1)生活道路における交通安全対策の推進
交通事故発生割合が大きい生活道路においては、車両速度を抑制する道路構造や注意喚起により、歩行者や自転車が安心して通行できる道路空間の整備を推進します。

 

第10次戸田市交通安全計画(案)パブリック・コメント(戸田市公式サイト)

 

一時停止線の先の白い点線 2015/3/24(真木大輔公式ブログ)

 

※画像引用元:ガードレールは誰のため?(歩行者の道)

 

 

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免許更新時講習で戸田駅西口ロータリーの説明を

交通と自転車]2016年7月7日(木)

先日こちらで問題提起し、Facebookとtwitterでかなりの反響があった「戸田駅西口ロータリー(※ラウンドアバウトではない)」に関して、ちょっとしたご報告です。
まず、道路管理者である「戸田市」には、路面標示や注意喚起看板などの視認性向上に努めていただくとして、「県警」にも何か改善を図ってもらえないものかと、このところ思案していました。

 

西口ロータリーの供用開始から1年間で1,000件もの検挙を行っている県警が、そもそもはあの場所に一時停止を設置したわけで、であるならば、「県警がまず行うべきは取り締まりではなく周知や指導であろう」と、私だけでなく多くの市民が感じているところです。


ただし、県警に取り締まりをやめてもらうことは、事実上不可能です。

 

そこで、私が目を付けたのが「運転免許証の更新時講習」です。

 

免許を更新する方のうち、70歳未満の優良運転者と一般運転者、および70歳以上の運転者は、鴻巣の運転免許センターだけでなく警察署でも「更新時講習」を受けることができます。
戸田市と蕨市を管轄する蕨警察署で更新時講習を受ける方々は、戸田駅西口ロータリーをクルマで通行する機会のある方々であると想定されます。

 

その更新時講習では、直近の道路交通法の改正についての説明があり、ラウンドアバウトの交通方法も取り上げられるのですが、そのなかで、

 

「ただし、戸田駅西口のロータリーはラウンドアバウトではなく、一時停止が必要。」

 

との一言が付け加えられるだけで、一定の周知効果が見込めるのではないかと考えました。

 

さっそく、蕨警察署の担当課に電話で要望したところ、最終的には、

 

「更新時講習はとだわらび交通安全協会に委託している。講習内容は講師の裁量に任せており警察としては把握していないが、要望の内容については、講習のなかで地域特有の事項として説明してもらうことは可能と考える。要望があったことは局長へ確実に伝える。」

 

との回答を頂きました。

 

回答の中で出た「交通安全協会」と警察との関係については、いくつか言及したいことがあるのですが、ここでは割愛し、まずは更新時講習の内容が改善されることを期待したいと思います。

 

検挙多発の戸田駅西口ロータリーは「ラウンドアバウト」ではない(真木大輔公式ブログ)

 

掲載画像引用元

 

 

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