蕨市のあまりにも酷い「色分け自歩道」

交通と自転車]2016年6月8日(水)

他の自治体の施策を蔑むのはよろしくないことだと思うのですが、あまりにも酷い事例が近隣自治体にあるので、戸田市に悪い影響を及ばさないためにも、こちらでご報告しておきます。

 

その酷い事例とは、お隣の蕨市で(おそらく昨年頃に)整備された自転車通行空間です。写真の通り、歩道を「歩行者だけが通って良い部分」と「自転車が通っても良い部分」とに視覚的に分離しているもので、以下これを「色分け自歩道」と呼びます。

 

この「色分け自歩道」は、日本にいまだ多くある「自歩道(正確には自転車歩行者道)」と何が異なるかというと、

 

自歩道
自歩道に歩行者がいない場合に限って、自歩道の中央から車道寄りの部分を「徐行」できる。歩行者がいたら一時停止。

 

色分け自歩道
色分け自歩道の自転車部分に歩行者がいない場合に限って、自転車部分を「安全な速度と方法で通行」できる。歩行者がいたら一時停止。

 

というように、「色分け自歩道」は、従来の「自歩道」に比べて自転車の通行しやすさを確保した歩道というわけです。
なお、どちらの自歩道であっても、そこを通る歩行者が最優先であり、かつ自転車は車道左側を走行することが原則であることは変わりません。

 

以下では、この「色分け自歩道」が間違っている理由を、私の観点から説明します。

 

理由① 歩行者にとっての空間が狭くなる

 

道路で最優先されるべき交通弱者である歩行者の空間をいじめることは、そもそもの設計思想として間違いです。いじめるべきは交通強者であるクルマの空間(=車道)です。

(なお、蕨市の事例では、既存の道路の改良ではなく、土地区画整理事業による道路の新設でこのようにしてしまった点が、なおさら不可解です。)

 

理由② 歩道上での自転車のスピード走行を助長してしまう

 

「色分け自歩道」は、自転車側に権利を与えたかのような勘違いを生み、自転車は、歩道であることを忘れてスピードを出しがちになります。

 

理由③ 色分けが完全には守られない

 

「色分け自歩道」はそもそも歩道ですので、色分けの自転車部分を歩行者が通ることが禁じられていません。実際に、歩行者が自転車部分を歩いている光景は日常です。
そこをスピードを出した自転車が通れば、歩行者との接触事故の危険性は高まります。

 

理由④ 交差点でのクルマとの事故を招く

 

歩道を通る自転車と交差点に入るクルマとは互いに視認しにくく、そのことが交差点での出会い頭事故を招きます。
また、「色分け自歩道」では自転車の双方向通行が可能となってしまっているため、交差点での自転車とクルマとの事故発生率が一番高い「歩道逆行(クルマとの逆方向に自転車が歩道上を通行)」が多発します。
さらに、交差点に入るクルマにとっては、「車道順行(=車道左側走行)」「歩道順行」「歩道逆行」の3つの方向から来る自転車に注意しなければならず、これも交差点での事故を招きます。

 

理由⑤ 自転車の走り方について「逆の教育効果」を生む

 

「色分け自歩道」は、いずれどこかで通常の道路と接続します。
「色分け自歩道」の自転車部分を通ってきた自転車は、多くの場合、その接続先の道路において、そのままの速度で歩道を通ります。場合によっては、車道に出て車道を逆走します。もちろんこれらの行動は誤っておりかつ危険です。

 

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蕨市の「色分け自歩道」を現地確認した際に撮影した写真を掲載します。
注目すべきところに〇印を付けていますので、上述の内容を参考に、何が間違っているかを当ててください。

 

 

 

蕨市の「色分け自歩道」周辺の自転車の走り方はグチャグチャでした。この混乱を招くものこそが「色分け自歩道」です。

 

望ましい自転車走行空間は、戸田市が整備しているような「車道左側に設置された幅の広い自転車レーン」です。
「色分け自歩道」は、車道と分離していることから一見安全に見えますが、それは「(歩行者がいないときに)そこを走っているときだけ」です。誤解なきようお願いします。

 

それにしても、蕨市に自転車議員がいればこんなことにはならなかったんだろうなと、つくづく残念です。

 

【追記】

 

蕨市の担当課に「そもそも何故このような自転車通行空間整備を行ったのか?」と尋ねたところ、

 

●両脇の歩道の幅員が不均等だったため。

 

とのことでしたので、「何故、歩道幅員が不均等になったのか?」とさらに尋ねたところ、

 

●南東(そこの両脇には幅員3.5mの通常の歩道あり)から続く車道のセンターラインを真っすぐ通すため。

 

とのことでした。

 

戸田市であれば、車道のセンターラインをずらしながらでも、車道の両脇に自転車レーンを整備したことでしょう。
一方、蕨市は、安全な自転車通行空間の整備を犠牲にして、車道のセンターラインを真っすぐにすることを優先したということです。

 

 

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